2008年1〜2月の本あたり

照葉樹林文化とは何か―東アジアの森が生み出した文明」/佐々木高明/中央公論新社中公新書

 『照葉樹林という言葉が今や一般的』といわれるほど一般的な言葉か?と思うけど、文化人類学の一つの位置づけとして、日本でも身近な"温帯常緑広葉樹林"を中心とした一つの文化体系論ということで、結構興味深く読めた。「東亜半月弧」論は聞いたことがあったのだけど、ちょうどその説の中の、照葉樹林文化の農耕形態の一つに、チャ(茶)の項目がうまく当てはまる。茶の原産地の進化?の状況が面白く、そもそもの茶自体がかなり農耕作物であるということ、各地での飲み方は進化というより地域適応という感じだ、ということが、昨年秋の世界お茶まつりの時の話に繋がり、そのまま勢いで読んだというとこ。

照葉樹林文化とは何か―東アジアの森が生み出した文明 (中公新書)

照葉樹林文化とは何か―東アジアの森が生み出した文明 (中公新書)

はてな年間100冊読書クラブ2 048/100+25>


「こんな話を聞いた」/阿刀田高/新潮社(新潮文庫

 ちょっとしたブラックユーモアを読みたくなったときに手に取った。すっごく面白い!というのではなく、安心して「ニヤリと笑える」ような感じ。

こんな話を聞いた (新潮文庫)

こんな話を聞いた (新潮文庫)

はてな年間100冊読書クラブ2 049/100+25>


「2010年南アフリカW杯が危ない! 」/木崎伸也/角川・エス・エス・コミュニケーションズ角川SSC新書

 サッカーにはあまり興味ないけど、南アフリカの現状には興味があったので。たぶん皆が抱いているだろう漠然とした不安がどのようなものか、ということが結構具体的に示されているのが興味深い。まあ、今の状況だと旅行を楽しみに行けるような状況では無さそうとしかいえない。
 正直、こんなネタにされてるような街ですが、この本の体験部分を読んだだけでも、それがあながちネタレベルではないということ(ネタというか既に笑えるレベルではない負のスパイラル)が恐ろしい、というか悲しい。

(参考)死にたい人にお薦めの危険な街ヨハネスブルグ(2ch)

2010年南アフリカW杯が危ない! (角川SSC新書)

2010年南アフリカW杯が危ない! (角川SSC新書)

はてな年間100冊読書クラブ2 050/100+25>


「アフリカの蹄」/帚木蓬生/講談社講談社文庫)

「アフリカの瞳」/帚木蓬生/講談社講談社文庫)

 厳格な人種差別政策のあったアフリカにある架空の某国*1の医療問題をモデルとした小説。前作がアパルトヘイト政策下の天然痘を細菌兵器としたホロコースト疑惑、続編がアパルトヘイト解放後のエイズ問題。作者は現役の医師とのことで、医療現場の表現のリアリティが高く、本筋以外にもいろいろと考えさせられることが多くとても興味深い。フィクションとは思えず、どちらも思わずモデルになった事件などがあったかと錯覚するような。後編は前編ほどのインパクトはなかったけれど、むしろ現実に近い状態と思われる。現在の南アフリカが、実際の小説の最後のように、解決への道標が出ているのなら未だ救われるのだが。

アフリカの蹄 (講談社文庫)

アフリカの蹄 (講談社文庫)

アフリカの瞳 (講談社文庫)

アフリカの瞳 (講談社文庫)

はてな年間100冊読書クラブ2 051・052/100+25>

*1:国名が出てくるわけではないが、南アフリカをモデルにしている