シリーズ トラムの走る街/香港島の2つのトラム

 まあそんなわけで香港滞在中なのですが、この香港島側には2つのトラムが走っています*1。一つは純粋な昔ながらの路面電車、もう一つはピークトラムといういわゆるケーブルカーです。

『ピークトラム(The Peak Tram)』(そういや、乗ったのは23日だったなぁ)


 とりあえず香港島に行ったら登っとくだろう、というビクトリア・ピークへのメイン交通機関。名前は「トラム」ですが、走っている姿を見るとどう見ても普通のケーブルカーです。ところが、一般的なケーブルカーだと、傾斜に合わせて車体が平行四辺形型になっていて、車内も階段状になっているものなのですが、こちらのピークトラムはよく見ると普通の長方形型、車内にはいっても通路はちょっと配慮はあるとはいえ、椅子などは普通に取り付けられています。ということはどういうことかというと、傾斜地を走られると、踏ん張らないと滑りそうになるのです…っておい! まあ、一応山に向かって座る配置になっていますけど、そういう問題なん?これが結構な急斜面を走るんですよね。背にへばりつくような感じで傾斜地を走ります。
 もともと山頂に涼を求め、1888年に開業したという歴史のある乗り物。麓の駅から海抜396mの頂上駅までの所要時間は約8分。最も傾斜が険しい部分は45度もあり、世界でもっとも急な斜面を走るのだとか。今は100ドルの夜景などと謳われる香港の名景に向かうべく、観光客でにぎわっていると同時に、実は結構途中駅があり、それは高台に住む人々が斜面エレベーター的に利用されているのだとか。そういう意味では、観光鉄道であると同時に、地域公共交通としての役割も果たしているのだといえるでしょう。ちなみに、始発駅からの乗車は駅でチケットを購入しますが、途中駅からの乗車の際は、運転席横から乗車し、車内での支払いになります。小銭の用意が面倒だったのでICOCAのようなICカード『オクトパス(八達通)』を買って乗車したのですが、乗車券を買うより割引になってちょっとお得な感じ。
 途中駅近くの車庫には、本物なのか復元車なのか、旧型のトラムが停留していました。緑色の車体は、そのまま平地に置かれると一般の路面電車車両と何ら変わらない感じ。確かに「トラム」という感じでした。麓の駅(花園道駅)がちょっと市街地から遠く離れていて、地下鉄中環駅あたりから歩くと結構な距離なのですが、スターフェリーの中環碼頭から15C系統のバスで向かうと直通なので便利です。同じ場所からは山頂までの直通バスもあり、バスで登るのも風景が異なり楽しいですので、せっかくビクトリアピークに登るなら、行き帰りで乗り物を変えてみるのも楽しいですよ。

香港の2階建て路面電車


 トラムと言うより、この方が通りは良さそうな香港の路面電車。こちらの開通も1904年と歴史があり、世界唯一の二階建て路面電車が走っていることで有名です。2HK$*2の均一運賃(!)で、香港島西部の堅尼地城(ケネディータウン)から中環・湾仔・銅鑼湾・北角と繁華街を抜け、東の端のシャウケイワンまでと、ハッピーバレーの競馬場の周辺の一周するルートがあります。こちらはどちらかというと観光客も利用しているけど、地元密着の地域路線っぽい。そもそも停留所に名前が付いていないので、降りたい場所を自分で風景を見ながら判断しなくちゃいけないのです。まあ、ひと駅・2駅乗り過ごしても、停留所の間隔がとても狭いので充分歩ける程度ですが。

 でも、香港島を観光するのに、トラムの2階は結構いい感じかも。賑やかなストリート・マーケットや空が見えないほどのビル街を抜けるばかりでなく、香港ならではの道にはみ出さんばかりの大きな看板、下町の方へ進むと、漢方薬やアパレル・日用品から文房具、海産物の干物の店など、めまぐるしく変わる風景には飽きが来ません。
 特に個人的に気に入っているところが、北角(North Point)を終点とする系統、北角終点の一つ手前で左折し、大通りより一本北側に北角止まりの電車だけが通る単線線路が敷いてあるところ。突然賑やかな市場の中を場違いのようにのろのろと掻き分けて進むのを、2階の先頭から眺めるのです。初めて香港に来たとき、知らずに乗ったトラムをたまたま終点まで乗ったのがこの区間で、ごみごみとした下町の喧噪がとても刺激的だったのを覚えています。今回も思ったより時間がなくバタバタとしていたけれど、この区間には乗ってみたいと思って無理矢理時間をひねり出して行ってきました。まあ、香港の喧噪の中には、あわただしいバタバタさをも抱き込んでくれるのかもしれません。

*1:もう一つ、九龍半島の新界地区にはLRT・軽快電車があるのですが、今回は時間の都合で行けなかったので割愛。ちなみに、こんな感じの電車です。→

*2:日本円で約30円程度