旅行中の読書メモ、その2。

「暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで」/Simon Singh/青木薫 訳/新潮社 暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで

 これは面白かった。暗号学の歴史書とでもいうのか。初期の文字置換法から今まさに使用している公開鍵暗号、はてはロゼッタストーンやヒエログラフの解明まで、暗号作成者と暗号解読者の壮絶な戦いが、興味深いエピソードとともに綴られている。まるで暗号がひとつの生き物のように蠢いているようだ。個人的には、今現在使われている暗号が、「絶対解法がわからない暗号」なのではなく「力技で膨大な時間を費やさなければ解けない」暗号だというのが興味深かった。100%のリスクを回避することは不可能に近いけれど、そうではなく、限りなく実用可能なレベルを探求すると言うのが、最近会社でお勉強中のセキュリティポリシーに通じているように思う。
 決して難しい内容でなく、特に専門知識が必要なわけでもなく、わかりやすい表現で書かれている。また翻訳のすばらしさもあって、洋書の訳語的言い回しなどもまったく感じず、分厚いハードカバーなのに、重さも感じさせず一気に読んでしまった。暗号のアルゴリズムがわかり(様な気になっただけな気がする、私の場合、たぶん…)、知的好奇心を大いに満足させてくれる本でした。
長門有希はてな年間100冊読書クラブ 053/100>