JAC3766便 種子島発鹿児島行、日本航空機製造式YS-11A-500型・JA8788


 この後機会があるかわからないので、今年9月で退役する唯一の国産旅客機・YS-11型機にお別れに行ってきました。所用で鹿児島に来る機会に恵まれたのでついでに。鹿児島は現在日本で唯一のYS-11運行会社、日本エアコミューターの基地。しかし、現在は鹿児島発は福岡線、種子島線(不定期で屋久島線)を残すのみ。私の記憶の中では既にメインルートから撤退し離島線で活躍するYS-11だったこと、離島の空港のほうが飛行機との距離を近く感じられること、この4/30で最後の離島線・鹿児島―種子島線から撤退する*1ことから、こういう機会がないと行かないだろうという種子島へミニトリップをしてきました。本当はYS便で往復したかったけど、1日1往復では滞在時間30分になってしまうので、Q400の早朝便で先行し、半日ミニ観光。雨じゃなかったらもう少しいろいろ見れたのになぁ、と少し残念。



 いよいよ14:25分発の鹿児島行きに搭乗。新種子島空港の搭乗待合室はきれいな球形のガラス張り、ビジョンの向こうに浮かび上がるようにして間近にYS-11が南を向いて羽を休めていました。飛行機好きの人や地元の人など、かわるがわるガラス越しに写真を撮影しています。ちょうど小雨も治まった14:20頃、少し遅れて、歩いて搭乗開始です。


 空港脇に掲げられた「おじゃり申せ種子島種子島の方言で「ようこそ」という意味)」の垂れ幕の隅に「長い間ありがとうYS-11」の文字。南側に隣接する丘の上のはたくさんのアマチュアカメラマン。黒く塗装された鼻先がアクセントの愛嬌のある顔。機体ドアに張られた「ありがとう 日本の翼 1965→2006」の塗装。ドアと客席部を挟むレトロなカーテン。荷物の置けない荷棚。「スチュワデス 呼出」とかかれたボタンや読書灯などのスイッチ周り。灰皿跡とコップ受け台。クッションもありしっかりと包み込んでくれるシート、昔ながらのトイレ。無骨だけど、行きのQ400より全体的にゆとりを感じる機内。機が動き出すのにあわせて手を振る係員の方たち。ロールスロイスエンジンとプロペラが奏でる少し独特で高い(?)音…。飛行機が得意でない人・ジェット機に慣れている人には、見るからに小さく不安にさせる機体かもしれませんが、私にとっては、なんだか見るものすべてが郷愁を誘ってくるような気がします。


 自分では約3年ぶり、そしてたぶん最後のYS-11搭乗。そういえば3年前に乗ったのも同じ鹿児島からの屋久島線往復だったな。あの時は台風が来て前日も何便か欠航、当日朝の搭乗待合室には大量の傘が干されていて、初便が無事鹿児島から着陸したときは、ロビーで歓喜の拍手が起こっていた。鹿児島空港に戻ると、天候不良で出発できないYS-11たちがズラリと揃い踏みしていた。あの日、結局屋久島から飛び立てた便は、私が乗った初便だけだったらしい。あれから3年、いろいろな思い出を持って降り立った鹿児島空港には、新しいプロペラ機たちに交じり「ありがとう日本の翼」塗装の機体がひっそりと眠っていました。


 ありがとう。そして、さようなら。また、いつか。

*1:あと5月の連休中、鹿児島―屋久島線で臨時便として活躍するらしいです。