この夏の2冊。その2
「ネバーランド」/恩田陸/集英社(集英社文庫)
- 作者: 恩田陸
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2003/05/20
- メディア: 文庫
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現実にあったとすれば、ただむさくるしいだけだろうと思うのだけど、青春小説の青臭さを語るには最高の舞台かもしれない。そして、そこで過ごす時間は、それは、寮生活をしたことのない者でも、男子校に通っていた者でなくても、懐かしい気分、ノスタルジアに浸ることができるよう。舞台設定の描写力は恩田陸の見せ場だと思う。冬休みに寮に居残る3人+闖入者(と言ってもいいだろう)の計4人の高校生が、それぞれの思惑・悩み・感情を保っていたはずの仮面を意図せず壊していく様。なんとも痛ましく、しかしそれが美しさでもあると思う。なので、描かれている問題は結構きつく、濃く、痛ましいが、読後はなぜだと思うぐらいに爽快感に満ちている。
実は、この本を読むきっかけになったのは、少し古いコミックだけど、那州雪絵「ここはグリーン・ウッド」(文庫版1 ISBN:4592881745 〜6 ISBN:4592881796)を読みかえしていて、なのだが。抱える問題は違っても、男子高校生の寮生活で揉まれていく様がなんと魅力的なことか、という点ではどちらも引けを取らない。ちなみに「ここグリ(略)」は花とゆめ連載の少女まんがなのだが、イケメンあり純愛ありメルヘンありホモありなど、少女漫画らしいといえばらしい話だけど、一味ある癖がよく、結構男女問わず人気をしていた記憶がある。
男子寮の話がこれだけ盛り上がるなら、では女子寮の話でも、同じように面白くなるかといえば、おそらく違うかなと思う。女子寮の中での、女子の生活になると、もっと関わりが深く、どろどろと、(いい意味でも悪い意味でも)のめりこんでしまうように感じる。ただただ本音だけをさらりと流してしまうあたりに、男子として設定した妙味があるのではないかと思っている。あくまで小説上の設定の上での話だが。いや、現実の高校生がこんなにさわやかで素直なことはないだろうよ。だからこそ、この空想の中の世界が活きるんだから。