志免鉱業所竪坑櫓と志免鉄道公園

福岡空港の近く、糟屋郡志免町というところに、炭坑の立坑跡とボタ山*1が残っているというのを見に行ってきた。かなり遠くからでもはっきりと判るその特異な形は、近代産業遺産として結構有名なようで存在は知っていたのだけど、場所が判らなくて行くことができなかった。それが、昨秋に放送されていたTVアニメ「スケッチブック 〜full color's〜」の舞台として出てきたことで少し話題になっていたおかげで、興味が再燃し気がつくと現地に。


北部九州・福岡県の筑豊地区は、北海道と並んで有名な産炭地。ここ志免鉱業所は、戦前は海軍・戦後は国鉄のエネルギー源として、1964年の閉山まで終始国営だったという意味でも珍しい炭坑。国内で唯一、世界でもベルギー・中国とここの3箇所にしかない、現存する鉄筋コンクリート製竪坑櫓。何度かあった解体の危機も免れ、国の有形文化財として登録、地元では「見守り保存(費用をかけずに保存する方針、とのこと)」として末永く保存する方針が決まったという。
この竪坑櫓を間近で見ると、存在感に圧倒されそうにも感じるのですが、歩ける範囲で街を散策していた時は、逆にこの存在感が逆に街を「見守り」しているような不思議な感じがします。四辺が同一ではなく、上部に突出した箇所が顔か何かのようにも思えてきて。廃墟的なものを嫌う人もいるのだろうけど、今でも街の誇りとして地元の人に愛され続けているようです。スケッチや写真の対象にしたくなる気持ちもわかろうというもの。

その近くには、この炭坑から石炭を搬出していた、旧国鉄勝田線志免駅跡が記念公園と遊歩道として残されている。もともとは石炭の輸送がメインだったのだろうけど、沿線は都心部へのバスが10〜20分ヘッドで走るかなりな住宅地、今も存続していたら近郊路線として発展していたのではと思うと少し勿体ない気もする。しかし、ホーム、線路、信号機などを残し保存されているこの駅跡は、まだ幸運な方なのだろう。ホームの中程を道路が横切っていて、その真ん中にバス停がある姿は不思議な感じがするけれど。


なんとなく、廃線跡・廃墟だというのに、ほんわかな気持ち、うらやましいような気分になるのは、なぜだろう。

(参考にさせていただいたサイト)
http://all-a.net/a_map/jp_fukuoka/shime.html(ARCHITECTURAL MAP>志免鉱業所竪坑櫓)
http://www.tateko.com/(「志免立坑櫓を活かす住民の会」)

<おまけ>調子に乗って、TVアニメ「スケッチブック 〜full color's〜」の舞台モデル比較を作ってみた
http://www10.plala.or.jp/knyacki_j/travel/skb/skb.htm

*1:石炭採掘時にできる土砂を集積した山