出雲のぼてぼて茶

knyacki_j2007-04-01

 日本に古くからあるお茶の文化として、『振り茶』というものがありました。振り茶とは番茶を茶筅で泡立て、そこにご飯やおかずをいれて間食として食べるお茶のことで、地方に行けば「ばたばた茶」「ぶくぶく茶」などの名称で残っているものがあります。この出雲には、「ぼてぼて茶」という飲み方があり、これは番茶とともに茶の花を乾燥させたものを入れて煮出し、そこにご飯やおかずをいれて間食として味わったものだとか。大きな竹の茶筅でかき混ぜると茶碗に当たってボテボテと音がするところから名付けられたといわれています。茶人大名として有名な松江藩主松平不昧公が鷹狩りの際に空腹しのぎに味わったという伝説もあるそうです*1

 松江城の堀を一周したところで、このボテボテ茶をいただけるお店があったので立ち寄ってみました。小泉八雲記念館前に位置する塩見茶屋さんというお店。松江城の内堀に面した景色のいいテラスで、遊覧船に見られながらこのぼてぼて茶をいただけます。
 注文すると直ぐに、抹茶茶碗に表面を泡立てられた水色の見えない番茶とおぼしきものと十穀米・沢庵・豆や蒲鉾などを細かく刻んだ具材の皿が出てくる。「この具をすべてお茶に入れ、かき混ぜていただいてください」とのこと。うまい人は茶碗をうまく傾けながら、中の具を飲んでしまうそうだけど、そんな器用なまねは出来なかったので、おとなしく付いてきた楊枝を使って飲みつつかき込みました。お茶はちょっと渋めになった番茶という感じ(煮出しているとのことだから当然か)、これに漬け物やらの甘辛い具材の味が合わさって、なかなか不思議な味わい。というほど、のんびり味わう程の量はないのですが。
 このぼてぼて茶は、このお店に限らず市内のお茶やさん・郷土料理店などでもいただけるとのこと。決してこれでおなかいっぱいにはならないですけど、一度味わってみるのも面白いと思います。

参考サイト:O-CHA NET〜ボテボテ茶〜 http://www.o-cha.net/japan/dictionary/japan/culture/culture05.html

*1:実際のところは、庶民が飢饉で苦しんでいたときの食べ方の工夫で、殿様云々は歴史の後付けという気がしますが