交通博物館・旧万世橋駅遺構特別公開

 今年5月14日で閉館となる「交通博物館」へ。目的は旧万世橋駅の遺構見学。


 万世橋駅は、1912年に中央線の東京市街側ターミナルとして華々しく開業。ところが1919年には中央線が東京駅まで延長開業し途中駅に、1923年には関東大震災にて辰野金吾・葛西万司設計の初代駅舎が焼失、その後開業時とは比べ物にならない質素な駅舎で再建。1936年には鉄道博物館(現在の交通博物館)が併設されたが、1943年戦時中に不要不急とみなされ廃止されてしまう、という悲運な駅。中央快速線の神田〜御茶ノ水間の交通博物館横の高架線上、少し上下線が離れて走る区間に今でも小さなホーム後が残っています。この旧万世橋駅の構造物部分が期間限定にて公開されているのです。


 さて。実は前々日・前日と2回見学へチャレンジするも、都合がつかず断念し、今日で3回目のチャレンジ。朝10時過ぎに博物館に着くも、見学受付には長蛇の列、既に最速で14:30の回。予約して一時外出し、10分ほど前に集合場所へ。簡単な説明ののち係員に案内され、遺構へと向かいます。



 倉庫のような木扉から、屋内なのに屋根のある通路を抜けると、中央線高架下のレンガアーチ部へ。レンガ積建造物の内側は、少しかび臭く地下のようなひんやりした空気で、閉鎖された空間であることを物語ってくれます。ここで6分ほどの紹介ビデオが流れ、その後しばらくアーチ部の見学。そして、再び狭い通路を通り、通用門を抜け「まんせいばし」というホーロー縦型の駅名標のある階段へ。駅名標はレプリカとのことだけど、元は白いタイル張りの壁面には戦時中の張り紙の後が。また階段の端にあるはずの金属製滑り止めが戦時中供出し剥がされたままの後で残るなど、暗い時代の影が見え隠れします。そして、その階段を登ると中央快速線線路の間のガラス張り展望スペースへ。ホーム跡にはレトロな駅名標が設置され、その後ろを快速電車が通過していく様は、今までの暗い雰囲気の場所から見える青空と相まって、まるで異空間への入り口のようでした。


 見学終了後、せっかくなので館内を巡回してきました。生き物のような蒸気機関車の上に広がる吹き抜け、食堂車を模したレストラン、鉄道以外の貴重な展示品、温室のようなガラス張りの階段室、そしてバウハウスを意識したといわれるモダニズムあふれる空間の本館。これで見納めになるかと思うと寂しさを感じます。