1月前半に読んだ「恩田陸」 

「ねじの回転 FEBRUARY MOMENT」上・下巻/恩田 陸/集英社(集英社文庫)
ねじの回転 (上) FEBRUARY MOMENT (集英社文庫)
ねじの回転―February moment (下) (集英社文庫)
ライオンハート」/恩田 陸/新潮社(新潮文庫)
ライオンハート (新潮文庫)
 たまたま12月下旬に全く別の書店で全く別々の考えで買った毛色の違う2冊が、どちらも恩田陸だったということに読後に気づいてなんともびっくりな感じ。

非日常と非日常の間にあるリアル感

 「ねじの回転」は2・26事件を扱った時間遡行もののSF、「ライオンハート」はSF的ラブストーリー。近代史改変モノのような気にかかるものはともかく、ラブストーリーなんて普段絶対に手を出さないのに、何を思って買ってみたのだろうと思っていたのだけど。しかし、もう中身といったら全然展開の違うもので。前に読んでいる本も含め、これだけ系統も違ういろいろな話をなんと器用に書き分ける人だろうと思ったことを覚えている。あと、不思議なことに、特に今回の2冊の時代考証がコロコロと変わったり行きつ戻りつするあたりなど、何度も読み返さないと頭がこんがらがる入り組んだ文章。そして、なにか遠くで見物をさせてもらっているかのような、傍観者的な感覚。構成が複雑だからか一気に食いつき読みたくなるのに、のめり込む、感情移入するという感じがあまりしない。現実感が薄く、どちらかというとほわぁっとした生暖かい空気感(悪い意味ではなく、心地よい感覚として)が伝わってくる。そう、なにか、懐かしいような、どこかで昔感じたような…。そういう感覚を思い起こさせてくれる、私にとって稀少な作家です。
 「ねじの回転」は上巻に圧倒されすぎて下巻の印象が弱くなるのだけど(それはそれでその生暖かい空気感を感じるのですが)、「ライオンハート」はほんとに気持ちよい温かみに包まれた気分を味わせてくれる(読み込むのはさらに難ではありますが)好著だと思いました。
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