たまには感想

● 墜落の夏 日航123便事故全記録/吉岡忍/新潮社(新潮文庫)/514円

墜落の夏―日航123便事故全記録 (新潮文庫)

墜落の夏―日航123便事故全記録 (新潮文庫)

● 墜落遺体 御巣鷹山日航機123便/飯塚訓/講談社(+α文庫)/680円
墜落遺体 御巣鷹山の日航機123便 (講談社+α文庫)

墜落遺体 御巣鷹山の日航機123便 (講談社+α文庫)

 内容的には重なる部分が多く、しかし著者の視点が正反対な2冊。吉岡忍は社会派ルポライター、飯塚訓は元群馬県警の警察官で事故当時の遺体身元確認班長。現場での苦しみを余すことなく書かれた後者は読者に感情移入を促せる。大量の遺体の意味の多様性から「死」と言うものを意識させられる。自分の両親を亡くしたときより客観的に「死」を考えさせられたかもしれない。それに対し前者はなぜこのような事故に至ったのか、ジャンボジェットという、東京ー大阪間という、航空事故という「特異性」を検証し、それらに否応なく関わった人々を通じて「生」について語ってくる。同じ事故を取り扱って、内容に関しても重複するものもありながら、どうして語りかけてくる内容がまるっきり逆に感じてしまうのだろう。もちろん、どちらが優れている、という性質のものではないが。