シリーズ トラムの走る街/ポーランド・クラクフ(krakòw)

knyacki_j2006-08-31

 ポーランドの南に位置する、クラクフという街にいます。
 クラクフは、ポーランドの中でも最も歴史のある都市の一つで、首都ワルシャワを日本の東京にたとえると、クラクフは京都のようなものだと言います。第二次大戦時にも戦禍を浴びず、旧市街は歴史的建造物が多く残り、世界遺産にも登録されています。旧市街はこぢんまりとしていて、徒歩でも十分散策できるほどですが、市街地は旧市街を中心に大きく広がっていて、市内のちょっとした移動はバスとともにトラムが重要な手段です。というか、地図を見ると路線網はとても広域にわたり、ちょっとした郊外電車も兼ねているようです。市内は30〜40km/hのスピードも、郊外に出ると60〜70km/hほどの速度で専用軌道を飛ばしていました。


 運営はバス・トラム共にクラクフ輸送公社(MPK KRAKOW)が行っていて、乗車券も共通。1回券(2.5PLD≒約100円弱)の他に、1時間券や24時間券*1などもあるそう。結構重宝させてもらいました。歩くの疲れたときに2停留所ほど、とかね。乗車券は主要停留所の券売機か、停留所近くのKIOSK売店)で売られていて、事前に購入し、乗車後に車内の改札機に通します(1回券以外は最初のみ)。そこで時刻が刻印されるというわけです。基本的に信用乗車制になっていますが、時々どうみても私服の人が検札官に早変わりし、キップを持っていない人には違反キップのようなものを手渡してました。といっても、何度か検札の場面に出くわしましたが、キップを持っていなかった人は1度のみだったので、それなりに制度は定着しているのでしょうね。ポーランド人はまじめなんかな。そういえば、併用軌道でもトラムの邪魔になるような走りをする車はほとんど見なかったし、安全地帯のない停留所では、トラムが停止しかけると車もきちんと止まっていたなあ。


 車体は大きく分けて3種類あり、共産圏時代から使われている古い車体2種類(チェコ・タトラ社の車体を元にコピー*2したものらしい)と、近年増備されたカナダ・ボンバルディア社の低床式 FLEXITY Classicというタイプの車体が使われています。見てるとどうも、新車は旧市街地近くの運行ルート中心に運行されているみたい。郊外の路線ほど新車より旧車・連接車より単車が使われている感じでした。後、ヨーロッパって基本そうなのかな、運転席が片方にしかなく、特に古い車体の後ろ側はちょっとした展望席のよう。そのため、郊外にある終点駅には必ず小回りのループ線があり、進行方向は常に一方に向けられるようになってました。



 あと、なんか楽しいなと思ったのが、車内の注意書き。左から「ローラースケート×」「たばこ×」「吹楽器×」「アイス×」「改札を忘れず」「手すりを持て」「持ち込み手荷物のサイズ」「ペットにマスク」だと思うのですが、トランペットとかアイスって…書かないとそんな人の多いお国柄なのかなぁ。


 こう見ると、便利で楽しく使いやすい乗り物、という感じなのですが。残念ながら、唯一にして最大の欠陥がありまして。このクラクフという街は、ポーランド人曰く「年中工事をしている街」なのだそうでして、そこら中で工事現場を見かけます。そうなると、トラムの路線も例外というわけにはいかず、実はしょっちゅう路線休止と経路変更があるのだそう。ちなみに、所定の経路から外れて運行する路線は、行き先表示が黄色になっています*3。停留所の時刻表には経由地名は書かれているけど地図がなく、地元の人でも乗る前に確認しないとわからない(おおげさかもですが)そうな。私もがんばって注意して経路を調べて乗ったつもりでしたが、それでも2度ほど予定外のところへ連れて行かれそうになりました。ちょっとしたミステリー列車のようだ…。まあでも、ちょうどトラムで移動するぐらいが似合う、手頃な規模の美しい街でした。ちょっと迷いつつも、乗ってみると楽しいですよ。

参考にしたサイト http://world.nycsubway.org/eu/pl/krakow.html(英文)

*1:1日券ではない

*2:参考ページによる。ライセンス受けて、なんかどうかは理解できなかったけど、勝手にコピーしたというようなニュアンスだった。

*3:大きな写真の2枚目と3枚目、系統番号などが黄色で書かれているのがそう。