停滞していた間に読んでいた本/ちゃんと感想はかけましたよ先行ver./No.042〜

「三月は深き紅の淵を」/恩田陸講談社講談社文庫)

三月は深き紅の淵を (講談社文庫)
 うーん、なんて言ったらいいんだろう。端的に言えば、架空の同名書籍にまつわる連作、なのだけど。ミステリーとは言い難い(謎解きとしてはあまりにもご都合だし)けれど、ホラーとも言えないし、頭がこんがらがるような。あといい意味でも悪い意味でも恩田陸らしいなぁって。共感はできないけれど、内容には一気に引き込まれはした。
はてな年間100冊読書クラブ 042/100>

「一号線を北上せよ<ヴェトナム街道編>」/沢木耕太郎講談社講談社文庫)

一号線を北上せよ<ヴェトナム街道編> (講談社文庫)
 一人旅のバイブルともいわれている『深夜特急』の著者の、その後20数年後の新たな旅。『私』に視点を置いていた前回と違い、目的を持った『旅』自体を描こうとしているのだと思う。
 ただ、著者自身がそれなりの年齢を経ているということと、彼なりの旅の流儀が変わっていないこととのギャップが垣間見られる。正直なところ、あまりいい意味では捉えがたいのだけれど。なぜなら、彼はこのまま、いつまでもあの20代に深夜特急を旅した彼で居続けられるのだろうかと思うから。見る視点、考える視点が「私」から「旅」へ変化しているのはわかるのに、語る視点だけが当時のまま「私」の中に濃厚に留まっていることに違和感を感じたことがきっかけ。旅に懐かしんでしまう「20代そのままの私」って変じゃないか。彼がわざわざ安パックのツアーバスに乗り、外国人の高齢バックパッカーを見て感じている違和感、日本人の団体旅行者を見かけ自然と感じていること、それがそのままこの本に対しての違和感につながってくるのだろうかと。「深夜特急」を読んだときのような興奮はなかったなぁ。やっぱりどこか旅行には行きたいとか思ったけど。
 そういえば、テレビ『水曜どうでしょう』では1号線をハノイから南下し、沢木耕太郎ホーチミン・シティから北上した。どうでしょうがシリーズを占める最後の旅であり、彼は20代当時の彼への再生・過去の先駆(近藤紘一や「解放前のサイゴン」など)を辿る再生の旅だからなのだろうかーそう考えると、まあ意外としっくりくるのだけどね。
はてな年間100冊読書クラブ 043/100>

とらドラ!」「とらドラ2!」/竹宮ゆゆこメディアワークス電撃文庫

とらドラ!1 (電撃文庫) とらドラ〈2!〉 (電撃文庫)
 友人に薦められて読んだけど、けっこう人気シリーズなんだそうですね。
 最近、なんとなくライトノベルを読むようになったけど、いまいち自分で探しているとわかり辛く、「全くなしとは言わないけど、魔法・超能力モノや特にバトルモノは極力避けて欲しい」と友人にチョイスを頼んだところ、「ファンタジー系メインなのに戦争や魔法抜きはオーダー厳しすぎ!」などと文句を言われつつも薦められたモノのうちの一つ*1
 閑話休題。なんというかストレートだなぁって。ほんとに純情すぎるぐらいの高校生の恋愛がなんというかむずがゆくなるぐらい。王道ラブコメって言っていいんだろうか。ちなみに著者の前作は読んでません。1巻はほんと絶好調に飛ばしてる。2巻になると、まあ続けるとなるとああいう展開にせざるを得ないんだろうけど、でも勢いもあってそれなりに楽しめました。なんというか、読んでいて米澤穂信の「春期限定いちごタルト事件」シリーズに出てくる2人を思い出しました。あの、恋愛関係や依存関係ではないが互恵関係にある…とかいうやつ。
 しかしライトノベルって、全般的に思うことが、1巻でどれだけ飛ばして、そこでひきつけて追いかけさせられるかという感じ。たまに無理やり続刊を作ったという感じのものも見かけたりして、最近続編ってそんなものかという感じがするようになりました。続きがワクワク、というのとは何か違うような。最近ライトノベルでない続き物も結構読んでいたけれど、そういう本から受ける印象とは根本的にどこか違うように思うんです。たとえていうならメジロパーマーツインターボのような脅威の大逃げでどこまで耐えれるか、という感じ。って自分でも訳わからないな。
はてな年間100冊読書クラブ 044/100>

「青空の卵」/坂木司東京創元社創元推理文庫

青空の卵 (創元推理文庫)
 広義の安楽椅子探偵ものといえるかな。なんといっても名探偵・鳥井は「ひきこもり」だから。なんとなく今風の設定っぽいけれど、いわゆるニートではなく、彼自身の複雑な生い立ちや社会での不調和による不登校から来ている。文章の端々にそういった彼の特殊?事情の描写と共に、彼がこういった状況に置かれたことで出現した人格や感性に見ることのできる魅力が伺える。主人公に限らず、登場人物は限りなく一般人といわれる枠から微妙に外れた、悩み・苦しみといったものを抱えた人物。そういったどこかしら魅力的な対象に、媚びるでも成り変わるでもなく、原動力はただ、ワトソン役の「僕」を守るがために謎に戦う。なんといっても「安楽椅子探偵モノ」なのに人物描写に重点があるからか、若干の違和感を抱くけれど、好き嫌いははっきりしそうだけど、個人的には話としては面白い。「彼」は大人の鋭い感性と子どものような視点を持つ特異な人物像として描かれているが、実は「僕」自身も(行動だけでなく感性などの点も)彼に引きずられているところがあるだろうと思う。しかし、それを差し引いても雛の刷り込みが聞き過ぎているかも。かといって擬似親子愛的とか同性愛的とかそう単純な感じでもないのですけど。読後感は悪くないのだけど、何か引っかかるものがある、そういう感じでした。
はてな年間100冊読書クラブ 045/100>

社会学入門―人間と社会の未来」/見田宗介岩波書店岩波新書

社会学入門―人間と社会の未来 (岩波新書)
 講義録のようだったので読みやすくてよかった。社会学自体が既に「今さら」な学問と見られつつある今に、決して体系的に網羅されているわけではないけれど、決して新鮮でもないが古さも感じない、なにかこういわゆる社会学というものの根幹・魂ともいえるようなものを感じることができます。少なくとも私が大学時代に学んだ社会学の経験は、どこかで活きているのだなと実感できたことがうれしくって。
はてな年間100冊読書クラブ 046/100>

*1:ちなみに、他に薦められたのは「エクスプローラー 覚醒少年」、「乃木坂春香の秘密」、「ニライカナイをさがして」、「半分の月がのぼる空」(ここまで既読)、「タクティカル・ジャッジメント」、「GOSICK」など。リストアップが大量だったのでまだ読みきれてなかったり。