松屋銀座・庵「茶の葉」の日本茶コース(東京都中央区銀座)

 銀座・松屋B1Fの奥のほうにある日本茶ショップ「茶の葉」のイートインコーナー。賑やかな百貨店の中にあるとは思えないような静かな空間。暖簾の奥の照明を落とした薄暗い一角は、桜の木のディスプレイに、水のせせらぎ音が流れる落ち着いた空間。カウンター7席のみのこぢんまりとしたお店です。ディスプレイは月ごとに替わるとのこと、今月は少し早いお花見をしていただいているのだとか。たまたま入ったときには2人席が空いていて友人とともに収まったのですが、その後は常に席待ちの人がいるという人気のお店のようでした。「お茶とお菓子」のセットや抹茶ドリンクなどのメニューもあったのですが、いろいろなお茶を味わう「コース」というのがあったので、友人とそれぞれホット・アイス1コースずつ注文。 


 最初は「玉露」ということで、これはどちらのコースも熱いもので。といっても玉露なので、十分に冷まされたお湯で丁寧に淹れられているのだろう、少し待たされて、持ち手のないかわいい急須と茶杯がやってきた。玉露田辺ごこうという種類。一人分にこんなにたくさん使うのかという量の茶葉から、水色がついているのかどうかわからないくらいの薄っすらとした液体に、どれほどの旨みが詰まっているのかと思うような濃縮された旨み、そして独特の甘み。お願いすると適温のお湯をいただけるので、淹れる度に少しずつ味が変わり何杯も楽しめるけどあんまり飲みすぎると酔いそうな。茶菓子の和三盆のやさしい甘みが玉露によくあう。次は「抹茶」、ここからはホットとアイスのコースに分かれる。私はアイス、涼しげなガラスの容器で。盆の上にはよく冷えた桜の枝が飾られていて、かわいい花を咲かせていた。そして最後に「煎茶」、ホットはリストの中の好みのお茶からとのこと。友人はスタッフの人にいろいろ尋ねながら小笠(みる芽)という種類を。アイスは専用のブレンドでとのことで、「結構たっぷりあります」という言葉通り、大きなガラスのサーバーとコップが。後で聞くと、阿寺と小笠という茶葉を水出ししたものだとか。水出しなのに5分ほどで抽出でき、まる1日は良質のまま保存が利くのだそう。抹茶が溶け込んでいるような濁った水色、まるで玉露かと思わせる濃厚な旨みと冷たさからくる清涼感が不思議な感じ。


 いろいろな意味で銀座という場所柄なのか、スタッフの方のきっちりした知識と丁寧でさりげない配慮も効いていて、なんとも贅沢な隠れ家のような空間でした。産地や収穫時期など素性が明らかな良質な茶葉にこだわっておられるとのこと。種類も大量にあるわけではないですが、おいしい日本茶とはこういうものだと教えられるようなお店です。本当にこういう味で慣れてしまうと、ペットボトルのようなお茶ドリンクが飲めなくなってしまいそうです。今でも別の種類の飲み物のように感じてはいるのですが。