“夏目漱石”の坊っちゃん列車(伊予鉄道市内線)

knyacki_j2005-03-23

 『乗り込んでみると、マッチ箱のような汽車だ。ごろごろと5分余り動いたら、もう降りなくてはならない…』(「坊っちゃん夏目漱石 より)
 松山にいます。残念ながら雨ですが。
 予定よりもはやく仕事の話がまとまり、帰りの飛行機まで時間があったので、大街道から昼食しがてら商店街を抜け、松山市駅前までやってきたら、市内線の電停でちょうど「坊っちゃん列車」の入れ換え作業をしていたので見学。後から復元された14号汽車タイプ。モデルは明治41年に輸入されたシリーズ最終車両とのことです。SL型ディーゼル機関車は重さが約10t弱、よくわからない仕掛けなのですが、車体の下に軸があるようで、車体を浮かせ、3人がかりで人力で機関車部を回転させていました(調べてみると、床下に油圧シリンダーが仕込まれていて、車体を浮かせ回転しているらしい)。意外と原始的だと思いきや、運転台には前方監視用液晶モニターが設置されていたり、と進んでるんだか進んでいないんだか。そして、後ろの客車(ハ31型とのこと)は少し大型の1両(約4t)で、こちらは助手の人が前後について、人力で押して移動させていました。車輪がついているから転がれば勢いがつくとは思うけど、結構な重労働だなという気が。運転士・車掌・助手と3人体制で乗務しているのにはそんな苦労があったのですね。
 しばらくぼーっと見ていたのですが、突然同行の先輩が「時間もあるし、乗ってみるか」と言いだしたので、せっかくの機会だからと松山市駅から道後温泉駅まで乗車してみた。通常の市内電車なら150円のところ、坊っちゃん列車は倍の300円。まあ上のような手間を考えたらそれぐらいは仕方ない。いっても、上一万から本町6丁目経由でJR松山駅方面へ行く人には無料で乗換券を出していたし、プラス200円で市内電車1日乗車券がついてくる(個別に買うと300円)ので、使い方によっては楽しんだ後もお得に利用できるということ。

 少し大きめの客車の編成に乗ったのだけど、それでも車内は小さく狭く、木製のベンチや壁に囲まれた箱は、漱石の言う「マッチ箱のような汽車」を再現。ベンチの掛け心地はすこぶる悪く、走り出すと床下から振動がゴツゴツとやってき、スピードのバランスが悪いと前後にガクガクと「まるで脱線するんじゃないか」と思うような揺れを感じ、となかなかのもの。ポッポーと汽笛を鳴らしながら走る様はイイ感じに晒し者なのですが、これはこれで遊園地の乗り物に乗車しているような気分。こういうものは乗るより見ている方が楽しいと思っていたのですが、乗ってみないとわからない乗り心地の悪さを楽しむ、というこれはこれでいい体験をしてきました。