Lights(大阪市北区中崎町)

knyacki_j2004-02-12


 「ちょっと歩くけど落ち着く店やねん」と、梅田で晩ごはんを食べたあとにどこかでゆっくり腰を落ち着けたいなと考えてる頭に投げかけてきた。今日はまだ寒さもましだし、たまにはいいかと足を向ける。カッパ横丁からロフトを越え、新御堂を渡り、周りがビル街から住宅地へと変わっていく中、どこまでいくねんな?と考え出す頃に、一軒の民家。「ここ」。夜でわかりにくいけど、見た目は少し古い日本家屋。それも路地の中なので、はじめてくるときは迷うことこの上ない場所に、そのカフェはあった。

 中にはいる。入り口右の厨房にはひとりの男の人が忙しそうにしていた。おそらくマスターひとりで営業しているのだろう。「席空いてますか?」の問いに「ロフトしか空いてないんです」。奥の細い梯子をのぼる。ここはロフトというより屋根裏部屋という言葉の方が似合う。店内を照らす白熱灯がいい味を出している、がロフトには光は届かない。ちょっと本などを読むには暗すぎて厳しい。その分、上から下のホールを見渡したり、ぼーっと時間がたつのを待つのがよいのかもしれない。

 ごはんを食べてきたので、私はカフェオレを頼む。ふと下を見るとなにかおいしそうなランチプレート風の料理を食べている人が。あの黄色いものはオムレツだろうか?ああ、おいしそうだ。もし今度来ることがあれば、次はあれを頼んでみよう。

 下を見ていると、何かしら自分が別世界にいるような感覚に襲われる。なにか世間と別離してしまったかのような…、それでいて下に向かって吸い込まれてしまいそうな感覚に襲われる。そういえば子どもの頃、2段ベッドの上段や梯子の上など、中途半端な高さがすごく怖かったという記憶が蘇る。別に高層ビルやタワーの展望台などは怖くないのだけど、2〜3m位という、落ちたら軽くケガぐらいするかも−という高さに恐怖を覚えたものだ。いまとなっては全然平気…と思っていたが、そんなことを考えて下を見ていたら、なにかしら落ち着かなくなってしまった。

 結局1時間ぐらいぼぉっとしていたのだろうか。気がついたらさほど長い時間でも無いのだけれど、気分的にはものすごく永遠な時間のように感じた。本を読むでもなく、話し続けるというわけでもなく、ただ無駄に時間を費やす。なんとも贅沢な時間の過ごし方だった、と満足して帰路についた。


 …似合わんなぁこういう文章。